こんにちは。
海外帰りの寿司屋の娘、Satomiです。

私は現在、「すしを入り口に、日本文化を自分の言葉で伝え、伝統を活かしながら発展させていける人を育てる」
というコンセプトのもと、出張講座やセミナー、監修などの活動を行っています。

私の講座は、すしの作り方を教えるものではありません。
すしという世界共通のテーマを通して、その背景にある日本の美意識や精神性、考え方をひも解き、それを「自分の言葉」で語れるようになることを大切にしています。

私にとって「すし」は物心ついた時から、当たり前にあるものです。そんな活動の中で、先日、ある受講者さんからとても鋭い質問をいただきました。

「先生って、よく「おすし」じゃなくて「すし」って言う気がするのですが、何か意味がありますか?」

私にとって「すし」は、物心ついた時から当たり前にあるものです。 その時は「無意識でした」と答えたのですが、改めて考えてみると、その何気ない言葉の選び方は、自分の潜在意識や日本語の「うち」と「そと」という感覚に深くつながっていることに気がついたのです。

1. 日本語は「私」より先に「関係性」で動く

「夏休み、旅行に行った」という一文。
日本人同士の会話なら、ほとんど無意識に
「どこ行ったの?」
と返します。

このとき私たちは、
「誰が行ったの?」
とは、ほとんど考えていません。

なぜならこの会話では、

  • 今、向かい合って話している
  • 同じ時間と場を共有している
  • 同じ話の流れの中にいる

という前提が、すでに共有されているからです。

つまり日本語では、「私は誰か」より先に、「今この場で、あなたとどんな関係にいるか」が決まっている。

同じ場にいて、同じ関係性の中で話していれば、主語が「あなた(=話し手)」であることは、言葉にしなくても自然に分かるのです。

日本語は、人を一人ずつ説明する言語ではありません。関係性そのものを前提にして進む言語です。

だからこそ、

  • 主語を省いても通じる
  • 言葉の選び方が変わる
  • 「うち/そと」が自然に切り替わる

そんな特徴が生まれます。

日本語は、「私」を強く主張するよりも、関係の空気を先に読む言語なのです。

2. 「うち」と「そと」という日本語のスイッチ

この関係性の感覚を、もっとはっきり表しているのが、日本語の「うち(内)」と「そと(外)」という考え方です。

  • うち:自分、家族、身内、自分の仕事

  • そと:お客さん、他人、社会、よその世界

この境界線は固定ではなく、場面や相手によって柔軟に変わります。

たとえば、自分の母親を家の中では「お母さん」と呼び、外の人には「母」と言う。

これは愛情の差ではありません。「うち」を代表して「そと」と接するときの、日本語のごく自然なルールなのです。

3. 「お」は「そと」に向けたサイン

では、「おすし」の「お」は何なのでしょうか。

この「お」は、単なる丁寧語や飾りではありません。
美化語の「お」には、「そと側」に向けて言葉を整えるという役割があります。

  • おすし:もてなされるもの、特別な体験(そとの視点)

  • すし:日常にあるもの、自分が担う仕事、生活そのもの(うちの視点)

日本語には、本当に大切で、自分の一部になっているものほど、言葉で飾らないという、不思議な性質があります。


4. 私にとって、すしは「家族」だった

私が無意識に「すし」と呼んでいた理由。
それは、すしが私にとって、完全に「うち側」の存在だったからです。

寿司屋の娘として育った私にとって、すしは「よそ行きの特別なごちそう」ではありませんでした。

当たり前にそこにあり、日常の風景であり、自分を形作ってきた――家族のような存在です。

「おすし」と言うときは、少し外側から眺めている感覚。
「すし」と言うときは、自分の一部として語っている感覚。

その無意識の使い分けの中に、私自身のアイデンティティが、静かに表れていました。


言葉の裏側にある、日本人の心

日本語は、使っている本人さえ気づかない潜在意識がにじみ出る言語です。

何気ない一言から、その人の立場や日常、価値観が透けて見える。
そこが、日本語の面白さであり、美しさだと思います。

私はこれからも、「すし」を入り口に、言葉の裏側にある日本人の感覚や美意識も自分の言葉で伝えていきたい。

そんな決意を、改めて確認した出来事でした。

参照:
認知と言語認知と言語 日本語の世界・英語の世界 (濱田英人著)
日本語から見た日本人 主体性の言語学 (廣瀬幸生・長谷川葉子著)


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まとめ

今回の「うち・そと」のお話、いかがでしたか? 言葉の裏側にある「日本人の心」を知ると、いつもの寿司が少し違って見えてくるはずです。

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