「知っている」だけでは、伝わらない。「話せる」だけでも、伝わらない。
日本文化を伝えるために必要なのは、何を、誰に、どのように伝えるかを考える力。
すし文化講座 寿司道では、この力を「伝達設計力」と呼んでいます。
伝達設計力とは
自分が持っている文化や知識を、相手に合わせて組み立て直し、「伝わる形」にする力です。
たとえば、外国人に「すし」を説明するとき、
「これは江戸前寿司です」
「酢飯を使っています」
「醤油をつけて食べます」
と知識を伝えるだけでは、日本人にとって当たり前のことが、相手には十分に伝わらないことがあります。
なぜなら、
「なぜ?」
「どうして?」
「日本人にとって、それにはどんな意味があるの?」
などがわからないからです。
大切なのは、単に情報を増やすことではありません。
相手が何を知っているのか。
どんなイメージを持っているのか。
どこで誤解する可能性があるのか。
そこまで考えたうえで、伝える内容・順番・言葉・方法を組み立てる。それが「伝達設計力」です。
「英語力」と「伝達設計力」は違います
外国人対応 = 英語力?
ではありません。
英語力
→ 英語を使ってコミュニケーションする力
伝達設計力
→ 相手に合わせて、伝える内容・順番・方法を考える力
つまり、
英語が話せても、伝える内容が整理されていなければ伝わらない。
一方で、
英語が得意でなくても、何をどう伝えるかを設計することで、伝わるコミュニケーションをつくることができます。
だから寿司道では、
「英語を話せる人を増やす」ことだけを目的としません。
日本文化を理解し、自分の言葉で伝えられる人を育てます。
伝達設計力をつくる4つの力
伝達設計力は、ひとつの技術だけで成り立つものではありません。
文化を知る。
相手を知る。
体験を通して感じる。
必要な言葉を選ぶ。
こうした力を組み合わせることで、
「伝わる」コミュニケーションが生まれます。

01 自国の文化理解
「そもそも、これは何なのか?」を知る
日本人だから知っているつもりになっている文化を、改めて見つめ直す。
すしの歴史、食文化、作法、季節感、価値観など、「なぜ日本ではこうするのか?」を理解します。
02 伝達設計力
「どう伝えれば、相手に届くのか?」を考える
相手の知識・文化・興味・疑問に合わせて、
- 何から話す?
- 何を省く?
- どんな言葉を使う?
- どんな例を出す?
- 体験してもらう?
- 質問してもらう?
など、伝える方法を組み立てます。
知識を「伝わる形」に変える力です。
03 文化体験
「説明する」だけでなく、「感じてもらう」
文化は、言葉だけでは伝わりません。
見る、触れる、食べる、聞く、体験する。
五感を通して文化を体験することで、知識が「自分ごと」になっていきます。
04 語学力
必要な言葉を選び、相手とつながる
語学力ももちろん大切です。
ただし、寿司道では
語学力を「伝えること」のゴールにはしません。
まず「何を伝えたいのか」を明確にし、そのうえで必要な言葉を選びます。
例えば、「サーモン」と「鮭」
「サーモン=鮭」と訳せれば、伝わるのか?
外国人に寿司のネタを説明するとき、
「サーモンです。英語では salmon、日本語では鮭です。」
と説明したとします。
言葉としては、これで十分に思えるかもしれません。
でも、ここで一つ考えてみます。
日本人にとって「鮭」と聞いて思い浮かぶものと、「サーモン」と聞いて思い浮かぶものは、本当に同じでしょうか?
日本では、日常的に「鮭」と呼ぶものと、寿司ネタとして「サーモン」と呼ぶものがあり、その呼び方の背景には、魚種や食べ方、生食文化などの違いがあります。
つまり、言葉を置き換えるだけでは、背景まで伝わらない。イメージしている食べ物も違うかもしれない。
では、どう伝える?
一例として、
「日本では『鮭』と『サーモン』という言葉を使い分けることがあります。」
と伝え、
「なぜ同じように見える魚なのに、呼び方が違うのでしょう?」
と問いかける。
そこから、
- 日本では魚をどのように食べてきたのか
- なぜ鮭は加熱して食べることが多かったのか
- なぜ寿司では「サーモン」という名前が定着したのか
- 生食文化はどのように広がったのか
など、言葉の違いを入口に、日本の食文化へと話を広げることができます。
ここに「伝達設計力」があります。
大切なのは、「鮭を英語で何と言うか」ではありません。
相手がその言葉から何をイメージするのか。
そして、何を知ってもらえば、日本人が当たり前だと思っていることを理解してもらえるのか。
そこまで考えて、
何を伝えるか
↓
どこから伝えるか
↓
どんな言葉を使うか
↓
どんな体験につなげるか
を組み立てる。
それが、寿司道の考える「伝達設計」です。
だから、「すし」を入口にする。「すし」は、単なる食べ物ではありません。
「すし」には、
- 日本の歴史
- 米文化
- 発酵文化
- 季節感
- 美意識
- 作法
- おもてなし
- 職人文化
- 地域性
- 日本人の価値観
など、さまざまな日本文化が詰まっています。
だからこそ「すし」は、日本文化を知る入口になる。
「すしって何?」から始まり、
なぜ日本ではこうするの?
なぜこういう食べ方をするの?
そこには、どんな考え方があるの?
と、一つの「すし」から、その背景にある文化へと視野を広げていく。
そして、自分たちの文化を知ることは、相手の文化を理解するための土台にもなります。
日本文化を知る。
↓
自分の言葉で整理する。
↓
相手を理解する。
↓
伝わる形を考える。
↓
文化と人をつなぐ。
そして、
「伝える」から、「伝わる」へ。
日本文化を一方的に教えるのではなく、
自分の文化を知り、相手を知り、伝わる形をつくる。
その先にあるのは、文化を通した人と人との理解です。
それが、寿司道の目指す学びです。文化と人をつなぐ。
この一連の力こそが、寿司道の考える「伝達設計力」です。
「伝える」から、「伝わる」へ。
日本文化を一方的に教えるのではなく、自分の文化を知り、相手を知り、伝わる形をつくる。
その先にあるのは、文化を通した人と人との理解です。
「すし」を入口に、日本文化を未来へつなぐ。それが、寿司道の目指す学びです。
